「100年の想いを石に刻む ― 今治南高校 創立100周年記念碑 完成までの記録」

こんにちは。社長の小田治彦です。

日頃は、青山石工房をご愛顧いただき誠にありがとうございます。

今回は、愛媛県立今治南高等学校創立100周年記念事業で、記念碑制作のご依頼をいただきました。加工の様子や設置完成までの様子をご紹介させていただきます。

 

完成した記念碑

 記念碑  /  大島自然石

※一部にインド産黒御影石使用

台石 / 大島石水磨き仕上げ

ご相談の経緯とご提案内容

昨年2月に、「来年創立100周年で記念碑を考えています。」とのお問い合わせをいただきました。

お話をいただいた瞬間から、「ぜひやらせていただきたい!」という気持ちでいっぱいで、100年という重みある歴史と、これから先の未来をつなぐ大切な節目にふさわしいものをお届けしたいと、心を引き締めて制作に臨みました。

また、お話をお聞きする中で【台座を含め2m以上は欲しい。】【学校のテーマが鍛える。(スポーツ・精神力)】などのご要望をいただきました。

 

設置場所の候補は中庭と外庭が有り、それぞれ違ったカタチでご提案させていただきました。

関係者の方には、『100周年という大変記念すべき記念碑になる為、外庭でたくさんの方に見ていただける場所が良いですね。』とお伝えさせていただきました。

 

こちらの石は大島自然石で、高さが約2m70㎝有ります。

 

記念碑にぴったりなカタチで、一目でこの石を使用したデザインでご提案しようと思いました。

 

イメージがしやすいように、設置した雰囲気をデッサンで表現しました。

その他にも、使用する自然石の写真や図面、今まで自然石を使って設計・施工した施工事例などもご覧いただきました。

 

最終的に弊社のデザイン案を大変気に入って下さり、R7.11月の100周年に向けてご依頼をいただきました。

 

 

工場作業の様子

切削機で自然石のスワリ部分を切削している様子です。

 

黒石をはめ込む為、それぞれの位置を計算し印をつけてから加工に移ります。

 

本体と台座の接合部分には、55㎜のステンレス丸棒を700㎜の長さ入れる予定で、その為の穴をあけている様子です。

 

碑文を黒石に彫り、自然石にはめ込む為の切削をしています。

 

位置出しをした部分を、工場に備え付けの機械でコア抜き作業をしました。

 

掘り込みの加工は、とても技術が必要な作業の一つです。

 

台座になる石を切削中の様子です。

 

キズのない一枚石を使用する事に決めていたので、加工途中で分かるキズも有りますので仕上がりまで気が抜けませんでした。

 

台座を磨いている様子です。

幅は2m10㎝有り、キズのない一枚石をとるのはとても苦労しました。

 

 

現場作業の様子

25t吊りラフタークレーンを使用し設置しました。

 

メインの自然石を起こす作業です。

 

前日に工場で何度も打ち合わせや準備をしましたが、作業の中で一番緊張した場面でした。

 

約2.7m有る石が立ち上がると、安堵の気持ちから自然と拍手が湧き起こりました。

 

ほっとしたのもつかの間で、台座に設置するのも極めて危険な作業でした。

 

緊張感の有る中で一発勝負での作業が続きましたが、ケガも無く無事に完成する事が出来ました。

 

 

完成!!

デザインについては、安定感の有る自然石を選び出来るだけシンプルにしようと考えました。

 

記念碑の高さは全長約3mで、総重量は約7t有ります。(自然石約4.5t+台座約2.5t)

美しく見える比率を使用し、幅と高さの寸法を決めました。

 

黒い雪だるまの様な部分は、100周年を表し100の数字を縦に配置しました。

 

下には碑文と記念マークをシンプルな大きさの黒石に彫刻しました。

2012年 宮城県に設置した津波記憶石と自然石のカタチがとても似ていたので、碑文石を似たようなデザインにしました。

 

【津波記憶石 第2号 宮崎県気仙沼市 小泉小学校内】 2012年撮影

 

庭に元々あった松との相性も良く、存在感の有る記念碑になりました。

 

石は、人間の力では到底及ばない、自然が与えてくれた壮大な存在です。

 

石肌は唯一無二の美しさで、空間に落ち着きや奥行きを感じさせる魅力も有ります。

 

 

石を割る時のドリルや打ち込んだセリ矢の跡が有り、 荒々しくも美しいその傷跡が、石に命を吹き込む瞬間を思わせます。

完成を見ていただいた先生方からも、「想像していた以上の石でした。」と、大変お喜びをいただきました。

 

 

除幕式

先日、除幕式が執り行われるとのご案内をいただき、参列させていただきました。

 

除幕後は、関係者の方々に石碑制作のご説明をさせていただきました。

 

完成した記念碑が皆様にお披露目される瞬間に立ち会うことができ、石材店としてこれ以上ない喜びと誇りを感じました。

 

 

完成後の感想

このたび、今治南高等学校創立100周年という大変意義深い節目に、記念碑制作のご依頼を賜り、誠にありがとうございました。

「鍛える」という学校のテーマにふさわしく、力強く、そして皆様に末永く愛される記念碑となるよう、願いを込めて制作に取り組ませていただきました。

制作を通じて、私たち自身も多くの学びと気づきを得ることができ、技術面でも大きくレベルアップする機会となりました。

 

この記念碑が、今治南高等学校の歩みと精神を未来へと語り継ぐ象徴となることを、心より願っております。

改めまして、この様なご縁をいただけた事に深く感謝申し上げます。